栽培の重要な理論その2_ブドウ糖の役割

その１からの続きです。
「窒素循環」ともう一つ大事な理論として「ブドウ糖の役割」があります。

ブドウ糖は光合成によって作られます。よく知られているように、水と二酸化炭素を太陽の光エネルギーで合成するとできる物質です。
炭素6個と水素12個と酸素6個で構成されています。

ブドウ糖の役割
ブドウ糖には二つの役割があります。

一つはエネルギー源です。

ブドウ糖を酸素を使って燃やすと熱が出ます（正確にはATPという物質を合成します）。それをエネルギーとして使います。
つまり「呼吸」ですね。
作物の場合エネルギーは何に使われるかというと、細胞分裂（つまり花を咲かせたり、実をつけたり、葉っぱを大きくしたり、根を伸ばしたり）や体の中で養分をいきわたらせるために使われます。

もう一つは体の素です。
ブドウ糖（炭水化物）が一直線につながると繊維（セルロース）となり骨格や実となります。窒素と結びつくとアミノ酸となり、アミノ酸が何百何千何万とつながると、たんぱく質となり細胞の主成分となります。
ここで話に出てくる窒素は根から吸い上げた窒素です。窒素循環のお話しで出てきたものですね。

栽培とブドウ糖
エネルギー源にもなるし、体の素にもなるこのブドウ糖。
ブドウ糖が全ての源といっても過言ではありません。

栽培するとは”ブドウ糖を作り出し、スムーズに利用できる条件を整えてやること”とも言えます。

光合成の条件、水、光、二酸化炭素は足りているか？
エネルギーを作る呼吸の条件、酸素はうまく吸えているか？（土の中も含めて）
ブドウ糖をアミノ酸にする時に必要な窒素はうまく吸えているか？
これらの条件がうまくいっていると栽培は基本スムーズに進みます。

逆にうまくいっていない時には、このブドウ糖を中心とした流れがどこかで滞っていると考えると原因をつきとめやすくなります。

窒素循環とあわせて
ブドウ糖の役割と窒素循環を理解していると、栽培全体がほんとうによく見えます。
できれば、自分なりの図を書けると理解が深まります。
畑で作物を見るとき、「窒素循環」と「ブドウ糖の役割」を頭に思い描いて下さい。課題があればすっと浮かび上がることでしょう。

また、目の前の畑が地球全体の循環の中にあること、いつもの作業が単なる畑作業ではなくなり、それを食べる自分の存在位置や歴史的な役割なども思い描けるようになります。農業が一歩自分にとって奥深くなること、それがこの二つの理論を理解する一番のメリットかもしれません。

スモールファーマーズ／古谷壮弘

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